熱中症対策に最適なアイスバス(Icebath)
熱中症とは
人間のからだには体温調節機能が備わっています。体温が上がると、末梢血管を拡張させ外に熱を放出できるようにし、汗をかき、汗が蒸発することで表面の温度を下げようとします。ところが長時間暑い環境にいたり、運動により熱産生が多い状態が続くと体外への熱の放出ができなくなり、体温は上昇していきます。また、大量の汗をかくと体内の水分と塩分が失われ、体液バランスが崩れその結果、頭痛や吐気、けいれん、めまい、意識消失などの症状が現れます。
近年、夏の平均気温は上昇を続けており、猛暑はどんどん深刻になっています。35℃以上の猛暑日と言われる日数も年々増加傾向にあり、それにあわせ、熱中症による病院搬送者や死亡数も大幅に増加しています。
イベントや大会には熱中症への対策、対応は必須な時代
昨年のカタールでの世界陸上での暑さや、オリンピックに向けた暑熱対策など、熱中症や暑さへの対策は大きく関心をあつめており、大会やイベントの運営に熱中症対策は必ず用意しなければいけない課題となっています。
今年も日本各地で猛暑の記録を更新し、熱中症で病院に搬送される方が続出されるなど猛暑とそれに対する対策はより必要となってきています。
熱中症への注意喚起や熱中症予防といったことも大事ですが、「なってしまった人にどう対処するか」や、「熱中症で死者を出さないためにどうするか」などにも目を向けなければなりません。現在日本では熱中症対策グッズにはさまざまなツールが出ており、ミストシャワーや冷房車、うちわなど各種イベントでも対策グッズの活用は始まっているものの、なってしまった方への対応は足りていないのが現状です。
熱中症になってしまったら?
熱中症になってしまった。もしくは熱中症が疑われる時、それは死に直結する緊急事態です。
熱中症で命を落とさないためには、重症の場合はすぐに救急隊を呼び医療者に引き渡すこと。そして、「現場でどれだけ早く体温を下げるか」が重要です。深部体温40.5℃が熱射病(重度の熱中症)の基準ですが、これへの対処では、30分以内に38.9℃まで体温を下げることが目標となります。
消防白書によれば、救急車を呼んで患者が病院に搬送されるまでには平均39分かかっています。イベントに救急車が待機しているといった場合の、現場到着までの所要時間を引いても到着までには30分以上の時間がかかっています。言い換えれば、夏のイベントやスポーツ大会などでは現場に「最低でも30分以内に深部体温を1.5℃下げられる環境」を作っておくことが絶対に必要ということです。
冷却方法と冷却スピード
では、「最低でも30分以内に深部体温を1.5℃下げられる環境」とはどのようなものでしょうか?
体温を下げる方法は多くあります。
・仰ぐ(扇風機など)
・水を掛ける
・アイスパック(首、脇、鼠径部)
・アイスバス
この中でもっとも効率よく冷やせるのがアイスバスです。
よく熱中症になってしまったときの対処として腋窩(わき)・鼠径(内股)・頸(首)のアイスパックなどが挙げられますが、実際にどのくらいの冷却効果があるのかを表したのが下記の図になります。
「最低でも30分以内に深部体温を1.5℃下げられる環境」は言い換えると1分あたり0.05℃になります。最低でもですから、0.1~0.15℃下げられる環境を用意するのが望ましい環境です。
図を見る通り最低のラインをクリアするには15℃以下の水が大量に必要となっていることがわかります。アイスパックや扇風機だけでは基準を満たすことはできていません。
真夏に蛇口の水をひねっても15℃以下の水は出ませんから、15℃以下のアイスバスを用意するというのが必要となります。
クライオコントロールのアイスバスが最適な理由
熱中症になってしまった方にいち早く対応するために最低でも15℃以下の水を大量に作っておくこと(アイスバス)が必要というのはおわかりいただけたと思いますが、15℃以下のアイスバスを用意して常に使えるように用意しておくのは大変です。
氷の準備、保管などの事前準備はもちろんですが、なによりも大変なのは熱中症患者が出てからアイスバスを用意するというところです。一度熱中症患者がでれば搬送や環境を整えることに人員を割かなければなりません。患者が出てから水と氷でアイスバスを用意するというのは、人員的にもスピード的にもあまり良くないでしょう。また、常に環境を作っておくとすると氷は大量に必要となります。
クライオコントロールのアイスバスなら設定温度を常に一定に保つ事ができる為、最初に準備すれば氷を気にしたり準備に手間取ることはなく、素早く患者に対応する事ができます。またポンプによる水の流れがある為、プール内の水を動かしより冷却効率を高めることができます。
・氷が不要
→ 15℃以下のアイスバスを維持するには大量の氷が必要になる。しかも、継ぎ足しが必要で人員を割く必要がある。
クライオコントロールではスイッチを入れてただ待つだけ。余裕をもって用意していれば氷が不要で一日中対応可能。
・細かな温度設定と温度維持が可能
→ 氷では冷えるが温度はわからず、熱中症に重要な14℃以下の温度が維持できない。
クライオコントロールのアイスバスなら一日中必要なときにすぐに使える。 患者が出てからアイスバスを急いで用意するといった作業が不要。
・UV殺菌により複数名の患者にも安心して使用可能。
→ 不特定多数の人が同じ水に入るため、菌の繁殖が心配。
クライオコントロールのアイスバスなら常に低い温度を保つため、温度の増減に伴う菌の繁殖を抑えることができる。
また、つねにUV殺菌しながら循環させる為ウイルスや大腸菌などの感染症の原因となる病原体の増殖も抑えることができ安心。
・バスも十分な強度があり、座っても潰れず安心。
→ 普通のビニールプールは強度が弱く、上に座ったり寄っかかったりすると潰れてしまう。
クライオコントロールのアイスバスは耐久性に優れており、縁に座っても潰れたり崩れたりなどせず安心。
さらに、段階的に空気の出し入れができるため、状況に合わせてプールの高さを変えることも可能。
これらの理由から熱中症の予防として氷をつかわないクライオコントロールのアイスバスシステムは有効であり、今後イベントやスポーツ大会などで必須のアイテムとなっていくことになります。
参考文献:
Casa DJ,et al:Cold Water Immersion: The Gold Standard for Exertional Heatstroke Treatment. Exerc Sport Sci Rev 35 : 141-149,2007 総務省 消防庁. 「平成30年度 消防白書」, 2019.
熱中症はどのようにして起こるのか – 環境省熱中症予防情報サイト:(最終閲覧日:2020 年 3月 11日), https://www.wbgt.env.go.jp/